白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「里香とは男の趣味が合いそうにないわ」
そう嫌味を言えば、「ありがとうございます」と返してくるこの男に、まんまと取り入られた気分だった。
野瀬京平に言われた言葉の全てに納得したわけではないけれど、社員食堂を出る時は、少しだけ気持ちがすっきりしていた。
自分が恋愛に向いているとは思わない。
実際に付き合って長く続かない原因も、相手ばかりにあるわけではなく、私にもある。一緒に過ごす時間を作ることが面倒になってしまうのも、その一つだ。
始める時は、理想の男性、理想の彼氏だと思って恋をしたはずなのに、理想の生活とそれが重なり合わないとき、私は恋の方を諦めてしまう。冷めてしまう。
仕事が好き。もっと成長したい。
それを最優先に考えて来たら、この歳になっていた。
もちろん野瀬京平の言うのように、両立だって可能だろうし、それをしている人は沢山いる。
残念なことに、私はそこまでの器用さを持ち合わせていなかった。
だけどそんな私でも、椿王子が今まで出会った男たちとは違うことくらい、さすがに理解している。
これだけの忙しさに追われても、結局考えてしまう。
忘れようと必死になっているだけで、何一つ忘れてない。