白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
パーティーでの出会いなんて、これまでもあったのに。
食事に誘われることも、部屋に招かれることも、充分過ぎるくらい経験した。
キスだって、それ以上のことだって。
ただ、こんなにも苦しい恋は初めてだった。
がっかりしたり、落ち込んだりすることはあったけど、そのどれもが、この一ヶ月に経験した感情に比べたら、かすり傷にもならない。
名前を呼ばれるだけで、触れられるだけで、私の中の欲が増していった。
彼女がいてもいいなんて、愚かな事を思うほどに。
終わらせたのは私なのに、終わることが出来ないのも私だ。
「今日はホワイトデーのイベントだっけ?」
食事から戻り、デスクで再び仕事に取り掛かっていると、いつの間にか横に立っていた部長が話しかけてきた。
だから手を止めて顔を上げる。
「はい。ジュエリーブランド主催のパーティーです。残業手当もらえますか?」
「いや、無理だよ。個人的なお誘いなんだろう?」
「ブラック企業って呟いてもいいですか?」
携帯電話を掴んで見せると、部長は「今度ご馳走するから」と笑い飛ばすだけだ。