白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「人が仕事の合間を縫ってわざわざ会いに来たのに、話も聞かずに追い返すって、いい度胸してるな」
どう考えても不機嫌な声に、気持ちがブレそうになるけれど、私は負けないように拳を握る。
「度胸もなにも、今更お会いする意味がわかりません」
「苦しんでる病人置いて帰ったのは、どこの誰だ?」
「それは……そもそも椿社長が悪いと思います」
「は?」
確かにあの日、まだ具合が悪そうな椿王子を残して家を飛び出したことには罪悪感もあるけれど、でもそうなったのは私のせいではない。
「とぼけたって、もう全部わかっていますから」
「わかってるって、何もわかってないから、今こうなってるんだろ?」
「こうなってるのは、椿社長のせいです!」
思わず声を張り上げると、呆れたような大きな溜息が聞こえた。
「あのな、俺だって忙しい中こうして来ているんだから、いつまでも意味のわかんないことを言ってないで、ちゃんと話をしろよ」
「わ、私だって、今すごく忙しいです!」
まるで自分ばかり多忙みたいに言うけれど、こっちだって暇じゃないし、好きで電話に出たわけじゃないのに。
「だったら、仕事が終わったら迎えに来る」