白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
気まずそうに視線を逸らしたのは相手の方だった。
だからこのまま気づかなかった振りをしても良かったけれど、今後の仕事のことが頭を過る。
この先、仕事相手になる可能性がないわけではない。
こんな時でも仕事脳な自分に呆れながら、私はその人の方へと足を進めた。
「皆川社長、こんばんは」
営業スマイルで正面に立った私を、先日ホテルで別れた皆川社長はぎょっとしたような目で見た。
「あ、ああ。家崎さん。君も来ていたんだね」
「はい。この前は大変失礼いたしました。酔っていたとはいえ、皆川社長に失礼なことをしてしまい」
頭を下げると、皆川社長はまた狼狽えたように距離を取ろうとする。
「いや、もういいよ!だいたいこういうことされても困るから、あれはもうなかったことに」
「え、でも」
「それに家崎さんもさ、彼氏がいるなら先に言ってくれないかな?」
「……彼氏?」
話が読めなくて、じっとその顔を見るけれど、やっぱり目も合わせてくれない。というか、なんか怖がられている?
不思議に思う私を見向きもすることなく、皆川社長はまた意味のわからないのことを口にする。