白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「痛っ」
小指を甘噛みされて、気持ち良いと思ったのは秘密だ。
「芙美に出会ってから、不安しかない」
「それは、あの……すみません」
ベッドの中で触れ合ったばかりの肌はほんのり熱い。
「もう少しダサくしてみたら?」
「え?」
「なんでいつもこんなに綺麗でいる?仕事柄?」
「それは……」
「ん?」
「笑いませんか?」
そう聞いた私に、椿王子が「笑わな」と答えてから啄ばむようにキスをする。
まるで悩んでいた日々へのご褒美みたいな時間。
「……昔から、母親に言われていたんです」
「お母さんに?」
「綺麗にしていたら、いつか白馬に乗った王子様が私を迎えに来てくれるって」
それは子供騙しのようなお伽噺。
だけど気づけば、私を造る原動力になっていた。
「芙美は純粋で可愛いな」
「またバカだと思いました?」
バカにされても仕方ないと、こればかりは自分でもある。
だけど椿王子は考えるように黙り込んだ後で、腹が立つくらいに自信に満ちた目で私を見た。