白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
そう言った顔が近づいてきて、もう逃げられないと気づく。
「やっぱり、王子様じゃないです」
「そうやって言いながらも敬語止めないんだな」
「これは慣れと言うか」
「俺はそのままでいいよ」
「待って、」
「待たない」
唇が重なるほんの少し前。
「俺のものって感じ」
嬉しそうに言う男の言葉に、幸せが押し寄せる。
「王子様じゃなくて悪魔の方が似合いそう」
「それ、よく言われる」
鼻先が擽るように触れた。
夢みたいだけど、夢じゃない。
「名前、椿悪魔にしたらどうですか?」
「それよりも、一回くらいは名前呼べば?」
「……っ」
心臓が震えたのは、私を求める熱が伝わったから。
その瞳から、指先から、声から、漏れる息の一つ一つから。
私に「愛している」と言ってくれている。
チョコレートみたいに甘い恋の始まり。
「ほら、呼んでみて」
願うみたいに囁かれた言葉に、そっと瞼を閉じた。
「王子、好き」
全てを溶かすようなキスが、私に愛を伝えた。
最奥まで流し込むように、甘く甘く。
「誕生日おめでとう、芙美」