白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
不思議なことだらけで、その横顔を見ていると、さっきまで私の声も聞こえていなさそうだった男の視線がこちらに向けられた。
「……え、なんですか?」
戸惑う私を他所に、「やっぱり今日は無理」と、再び電話の相手との会話に戻っていく。
もしかして、私が今ここに居るのが問題なのかな。
それならやっぱり……。
「椿社長、私、帰りましょうか?」
本当はもっと一緒に居たいけれど、聞き分けの良い女のフリをしてそう聞いてみると、今度は強く抱き寄せられた。
「いいか博世、俺は今、甘い朝の真っ只中にいるんだ。だから今日は無理。邪魔をするな」
甘い、朝?
込められた意味を理解して、身体の熱が増す。
それに、帰らなくてもいいってことだよね。
「月曜の仕事終わりにしろ。ああ、そうだ。姫子は連れて来るなよ」
あ、また姫子。
「当たり前だろ。姫ちゃんが居たら、話がややこしくなる」
「……姫ちゃん」
「あとそうだ、絶対に手は出すなよ!」
一体、さっきから誰と電話をしているのだろう。
博世さんとは、誰なのだろう。