白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
地下の駐車場に車を停めてきたらしい椿社長が、私の手を握って「帰ろう」と言ってくれる。
だから建前だらけの文句を言うのは止めて、素直にその手を握り返した。
「今日は車なんですね」
「ああ、今日は飲む予定もなかったからな。でも芙美と会うと飲みたくなるから困る」
その言葉にクスクス笑いながら、私たちは手を繋いで地下の駐車場に向かった。
「雨、すごいですね」
車のフロントガラスの向こうでは、雨が絶え間なく降り続けている。
正直、迎えに来てくれて助かった。
「腹減ってるよな」
「え?」
「俺の部屋に着いてからでもいいけど、道混んでるから、先にどこかで飯食った方が早いかもな」
その言葉の通り、さっきから車が進まない。
事故か、雨のせいだろうか。
「送ってくれるだけかと思いました」
「せっかく会えたのに?」
「だって、椿社長も忙しいから」