白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「外食続き?」
「はい。昨日一昨日と、接待に付き合わされて」
それが結構大変だった。
「両方ともお酒が好きな方だったので、思ったよりも飲まされて困っちゃいました」
お陰で今日の午前中は、仕事が手につかないほど眠かった。
「飲まされて、口説かれた?」
「え?」
隣を見ると、一瞬だけ視線が合わさった。
だけどすぐに、ハンドルを握る男の視線は私からは離れていき、助手席に取り残された私は、その話題を出したことを後悔した。
だって目が合った一瞬の表情は、笑っていたけど、笑っていない顔だった。今だってその横顔は不機嫌そう。
「椿社長、やっぱりこの話は、」
「どっちか答えたら?」
「……」
「それとも、言えないことがあった?」
付き合ってみてわかったけれど、椿王子は過保護だ。
「昨日のお相手の方が若い方で、そういうノリだったと言うか、本気で口説かれたわけではなくて」
こういう時、誤魔化そうとしても無理なことはもう知っている。だから仕方なく口を開いた私の話を、椿社長は黙ったまま聞く。