白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「もちろん冗談とは言え、ちゃんとお断りしましたよ!終わってからも一人で帰ってきましたし。ただ、ちょっと馴れ馴れしいというか、セクハラ紛いなことしてくる方だったので、最後の方は後輩の男の子に任せて逃げてきちゃいました」
なるべく明るい声で話すけれど返事も相槌もなくて、自分が何か誤解を招くようなことを言っていないか不安になる。
そしてこうなると人は、余計なことまで無意識に喋り始める。
「本当に品がないって言うか、下ネタばかり聞いてくるんです!こっちが強く言えない事をいいことに、最近したのいつ?とか、好きな体位は?とか、どこが感じるかなんて、完全にセクハラですよね?おまけに酔ったふりして胸を触られた時は引っ叩いてやろうかと思いました!本当に迷惑ですよね。あの会社との席には、今後一切女子社員を行かせないよう部長にお願いしておきました……って、すみません。私ばかり喋っちゃって」
話しているうちに昨日のことを思い出して、ついついヒートアップしてしまった。
「あのさ」
それまで黙って聞いていた椿社長が口を開くと、車をゆっくりと走らせながら「やっぱ、飯なしな」と続ける。
つまりそれはどういうことだろうかと首を傾げた私は、いつの間にかさっきまでとは違う道を走っていることに気づく。なんとも煌びやかなネオンが、雨の夜を照らしている。