白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
シンプルな紺色のスーツでも、この人が着るともっと上質な物に見える。昨日よりも無造作にセットされた髪が、僅かに揺れた。
これが、椿王子という男。

「家崎、この方は?」

先輩の声に、はっとして視線を戻す。

「昨日、パーティーでお会いした方です」

「もしかして、ドタキャンの相手?」

「あの・・・はい」

正直に答えると、先輩が席を立ち私たちに近づく。

「先輩?」

「約束を破っておいて、今更家崎に何の用ですか?」

鋭い眼差しで男を見た先輩は、口調を弱めることなく続ける。

「北川です。彼女は大学の後輩で、今も楽しく食事をしていたところです。なので本日はお引き取り願えませんか?家崎も困っています」

「俺には、あなたの下心満載の誘いに、彼女が困っているように見えましたけどね」

「ねえ、待って。先輩に失礼なこと言わないでよ」

これ以上ここに居たら、北川先輩を不快にさせるだけだ。
私は急いで立ち上がり、先輩に謝罪をする。

「家崎、いいよ。もう出よう。二人で飲み直そう?」
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