白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
そういう意味では、その日知り合った青年実業家の男はイマイチだった。
いかにも高級ブランドのスーツを着ています!と主張するようなスタイルは、お洒落とは言いがたい。
むしろダサい。
だけどそのスタイルの良さと、彫りの深い顔立ちのおかげで、それなりにカッコ良く見えて、実際女性誌の編集長や、モデルたちに声を掛けられていた。
そんな男とのきっかけは、向こうからやって来た。

「LDVカンパニーの家崎さんですよね?」

私が一人になるのを狙ったようなタイミングで声を掛けてきた男の手には、イチゴのカクテル。差し出されたそれを、私は一瞬の間を開けてから受け取る。

「どこかでお会いしました?」

「いえ、初めてです」

「じゃあ、初めまして」

手を差し出すと、男がそれに応えて優しく握る。

「代官山と広尾で輸入雑貨を取り扱うインテリアショップを経営している坂口です。家崎さんのことはよく噂で耳にしていたんです」

渡された名刺を見る。
最近雑誌にも取り上げられているお店だ。

「噂ですか?悪い噂じゃないといいのですが」
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