白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「この車、どこに向かっているんですか?」
「あそこだよ」
男の指が、窓ガラスの向こうの夜景を指す。
そこに見えたのは、昨年建てられたばかりの超高級タワーマンション。芸能人や有名企業の社長さんたちが住んでいるとか噂になっていた。
「あのマンションの一番上」
「どういう、意味ですか?」
「今向かっている、俺の住まい」
「あの、ちょっと意味が」
「その辺のレストランやホテルより、夜景を楽しめる」
夜景を楽しめる。
今から?椿社長と二人で?彼の部屋へ?
「・・・は!?」
「ん?」
何食わぬ顔で私を見る男に、嫌な予感しかしない。
「わ、私、帰ります」
慌てる私を見ながら、男は甘い笑みを崩さず口を開く。
「ダメに決まってるだろ。少しは考えてもの言いなよ、美人広報の家崎さん」
「な、だって!」
「安心しろ。一緒にチョコレート食べるだけだ。まあ、リクエストがあればそれ以上をしても構わないけど」
ニヤリと悪戯に笑う顔にまた、どきっとする。