白馬の悪魔さま 【完】番外編追加

初めて見る銘柄のワインに、無意識に顔が緩む。

「美味しそう」

「座って」

再びソファに座ると、その横に椿王子も腰を下ろす。
広いソファのせいで空く距離が、変な緊張感を生む。

「チョコ、好みがわからなくて色々買っちゃいました」

気持ちを落ち着かせようと、紙袋からそれらを取り出す。

「5個って、買い過ぎ」

「そう思うなら、もっと好みの味とかブランドとかを教えておいてくださいよ」

「今から教えようか?」

「え?」

「はい、飲んでみて?」

美しく染まるワイングラスを、椿王子が差し出した。
だから言われた通りに、唇を付けた。

「・・・美味しい」

口の中に広がる柔らかな苦味とまろやかな甘みが、確かに甘いチョコと合いそうだ。

「良かった」

私の反応を確認すると、椿王子がパスタにフォークを通した。全ての動作が、完璧なまでに美しいと思った。
ジャケットを脱いだ白いシャツの上に合わせた、光沢感のあるネイビーのベスト。淡いピンクのネクタイには、合わせたのだろうネイビーのラインが走る。
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