白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
わざわざ聞かなくても、身に付けている全てが良質な物であることがわかる。
「味、大丈夫ですか?」
「・・・うん。完璧」
その言葉に、緊張が解れるのを感じる。
「映画好き?」
「え?」
パスタを食べ終えると、男がそう聞きながら立ち上がった。
「観ようと思って買ったけど、時間なくてさ。もし好きなら、今から一緒に観ない?」
「えっと・・・はい」
どうして断らなかったのか、自分でもよくわからない。
ただワインが美味しくて、私の作ったパスタを「美味しい」と食べきってくれたことに、なんとなく気分が良くなっていたのかもしれない。
椿社長が観たかったと言う映画は、少し前に公開して話題になっていた洋画だった。
部屋の明かりを消して、ソファに並んで座る距離は、さっきよりも近い。
広い部屋に、テレビの光と音。
それから私の心臓の音が、ドクンドクンと響く。
気を紛らわそうと、グラスを掴み口に運ぶ。
隣を見ると、映画に集中する横顔。
結局、私は何しに来たのだろう。