白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「とても優秀で美しい広報さんだと聞いていて、一度お会いしたかったんです」
こういう場も、こういう出会いも慣れているのだろう。
「お上手ですね。でも、ありがとうございます」
「本心ですよ。なので出来れば仕事以外のお話もしたいのですが」
「・・・今は社長の同伴で来ていますので」
「それなら、この後二人で飲み直しませんか?」
私が返す言葉も予測していたようなスムーズな会話に、一瞬心が動いたのは事実だ。それでも断ることにしたのは、まだ仕事モードな自分が冷静さを失わずにいてくれたから。
「ごめんなさい。今夜は難しいの」
「でしたら、せめて連絡先を」
「私の?」
「いえ、すみません・・・流石に強引過ぎますね。もう少しお話をしてもいいですか?」
引かない男だ。でも、嫌ではない。
「ええ、もちろん」
口元に笑みを作り答えると、男は大袈裟なほどに喜んで、空いていたテーブルに私を誘った。
別れ際、連絡先を交換したのは、彼の話が想像していたよりも面白くて、過ごした時間が有意義に思えたからだ。
だからそれから一週間も経たないうちに、その男と二人で会うことにした。
私よりも5つ年上の坂口さんは、リードの上手い人だった。