白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「下は見るなよ?」
「もちろんです」
真っ直ぐに目を向けると、東京の街が競い合うように幾つもの光を放っていた。ビルの灯りも、街灯も、車のヘッドライトも、全てが息を飲むほど美しい。
「キレイ」
こんな夜景を自宅で見られるなんて、信じられない。
まるで星空みたいな街並みに魅入っていると、急に身体が柔らかな感触に包まれた。
「寒くない?」
後ろから回された腕が、私の身体を優しく引き寄せて、布越しに肌が触れ合う。
耳元に寄せられた唇から漏れる呼吸音に、お腹の奥が震えた。恥ずかしいほどに。
「椿社長」
「ん?」
こんなの、ダメなのに。
絶対にまた、後悔するのに。
朝になったら、魔法は解けるのに。
「まだ、寒いです」
「なら、もっと温まることする?」
その言葉に振り返ると、応えるよりも先に唇が重なった。
現実から切り離されたような空間で、私は、私を抱きしめる男の髪に両手で触れる。もっと近づきたくて。