白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「帰って、いいんですか?」
聞きながら、馬鹿だと思った。
こんなことを聞くなんて、今の私はどうかしている。
夜景を見て浮かれた?
「さすがにこのまま喰うつもりはないよ。今夜は初めから帰す予定。タクシー呼ぶから待ってろ」
男はそう言って私の髪を撫でると、携帯電話を手に部屋の奥へと姿を消す。
あまりの恥ずかしさに、私はただ立ち尽くす。
私は何を考えていたの?
何に期待していたの?
自分の滑稽さを消し去りたくて、無意味に部屋の中を歩きまわっていると、棚の上に飾られた一枚の写真が目に入った。
「・・・なんだ、そういうことか」
心がきゅっと痛んだ気がした。
どうやら魔法が解けたみたいだ。
写真に写るのは、椿社長と頬を寄せ合う女の子。
とても幸せそうに笑う彼女は、ハーフだろうか、彼と並んでも引けを取らない、美しい顔立ちをしている。
まさに、お似合いだ。
「タクシー、すぐ来るって」
「そう、ですか」
「芙美?どうかした?」