白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
近づいてきた男の手が、私の頬に触れる。
でもその目を見ることが出来ない。

「どうして、私にキスしたんですか?」

自分がどんな顔でそれを口にしているのか、想像もしたくない。

「キス、したくなったから」

「・・・それって」

ただの気まぐれで、それ以上の感情はないということだろうか。ただの遊びで、ドキドキしていたのは私だけ?

「金曜日」

「え?」

「来週は月曜から出張で、日本に居ないんだ」

「それが何か、」

「金曜の夜には帰る」

私の感情なんて無視して喋る男に、私は顔を顰めた。
それから睨むように、その整った顔を見る。

「あなたの予定が、私に関係ありますか?」

「あるから伝えている」

「え?」

「またここで、一緒に食事をしよう」

これもまた気まぐれなのだろう。
だから絶対に、流されたくない。

「会うのは、今日だけの約束です」

「だから、次の約束を今してる」
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