白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
そして話も上手いけど、口が上手い。
「こんなに綺麗な人と食事をするのは、緊張するな」とか「君は頭も良い女性だ」とか、「こんなにも理想にあった女性、芙美ちゃんが初めてだよ」なんて甘い言葉を平気で口にするから、その度に彼が魅力的に見えてくる。
もちろんそれが全て本心ではないことはわかっているけれど、一緒に食事をするくらいには興味のある男から褒められたら、嫌な気はしないどころか、嬉しく感じてしまうのは普通だ。
それでも一度目は、一軒目で帰ることを選択した。
だけどその3日後、再び二人きりで食事をした席で、私の思考は停止する。いや、良い方へ振り切るように盲目になる。

「気が早いと思うかもしれないけど、結婚を前提に付き合って欲しい」

「結婚?」

「ああ。本当に、君との出逢いは運命だと思うんだ」

今どき、こんなセリフはドラマの中にだって用意されていないだろう。だけどその澄んだ瞳に見つめられながら言われたら、私は簡単に落とされてしまう女だ。残念なことに。
だって職業も悪くない。自分の店を持てるくらいの実力も人望もあるだろう。きっと努力家だろうし、話をしていても楽しいし、おおらかでユーモアもあり誠実だ。
そう、良いところならいくつも挙げられる。
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