白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
椿社長の後ろを歩き、一週間前に訪れた部屋に足を踏み入れた時も、嬉しいとは思えなかった。
「腹、減っただろ?」
リビングに入るなりそう聞いた椿王子に頷くと、「待ってろ」とだけ言ってどこかに電話を掛け始めた。
私は少し迷ってからキッチンに入り、冷蔵庫の中に買って来た食材を入れることにした。
それからリビングに戻ると、大きなソファの隅に座る。
どうしよう。また来てしまった。
……後悔。それしかない。
一人残された空間で、私は後ろを振り返る。
そこには一週間前と変わらない写真。
私より確実に若い。それでいて吃驚するくらい可愛い。
お人形みたい。
もう何に対してかわからない溜息が出る。
こんな展開、どうかしている。
間違っている。
だけど……。
「悪い。デリバリー頼んだから。もう少し待てるか?」
電話を終えて戻ってきた男の気配に急いで体勢を整える。それから何も気づいていないフリをして、差し出されたワイングラスを受け取った。
「はい。大丈夫ですよ」
グラスを受け取る瞬間、触れた指先が熱くなる。