白馬の悪魔さま 【完】番外編追加

スーパーでは朝食の材料しか買わなかったからどうするのかと思っていたら、夕食はデリバリーらしい。
宅配ピザとかだろうか。なんだか少し意外。

「このワイン、芙美に飲ませたくて買って来たんだ」

「私に?」

「そう。出張土産」

「……そう言えば、どこに行かれてたんですか?」

考えてみたら、椿社長はあまり仕事の話をしない。
私にも、仕事のことを聞いてこないし。
それが少しだけ寂しいような気もして視線を落とすと、隣に腰を下ろした男が「ロワール」と口にした。
だから変な間が出来た。言葉を理解する必要があった。

「……え、フランス!?」

「ああ。日程が短すぎて疲れた」

その言葉を体現するように、椿社長はぐったりとした様子で、背中をソファに預けて伸びをした。

「おつかれさまです」

「そう思うなら、癒して」

「癒すって、急に言われても」

「マジで疲れたから、どうにかしてよ」

こちらを向いた椿社長の瞳に私が映る。
嫌なのに、ドキドキする。

「それなら私なんかと会わないほうがいいんじゃないですか?」
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