白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
流されたかったのに、流されることも出来なかった。
それはつまり、そういうことだ。
椿社長の存在が、私の中で怖いくらいに大きくなっている。
「なんですかこれ?」
リビングで待つ私の元に運ばれてきたのは、本格的なイタリアンだった。デリバリーと言われたから、宅配ピザとかを想像していた自分が今更だけど恥ずかしい。
テーブルに並んだのは、ミシュランにも載っているお店のパスタやオードブルだ。
「ここ、デリバリーもあるんですか?」
「いや、普通はないと思う」
「え?」
それってどういうこと?
「親父がここのオーナーと昔から仲良いから」
「つまり、特別に作ってもらえるってことですか?しかも自宅まで持って来てくれるって……」
やっぱり次元が違う。
「別にこの店だけじゃないけど」
「え!?」
「和食も中華も、フランス料理でも、頼めば来る」
もう、眩暈がしそう。
本来なら一ヶ月前には予約しないと入れないお店の料理を、こんなにも簡単に食べられることになるとは思わなかった。