白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
どうせ落ちるなら、
「それなら、これも不注意ですか?」
一度だけ、愛されてみたい。
自分から重ねた唇に、こうなることを知っていたように熱い舌が割って入ってくる。
ベッドに沈むまでの数秒が、重力に逆らうような長い時間に思えた。
その指が、私の髪に差し込まれる。
覆いかぶさる重みに、私は腕を回した。
このまま、全部終わればいい。
明日には消える愛だとしても、この男に落ちたい。
溺れて、消えて、溶けるみたいに……。
「はい、おしまい」
「……へ?」
下ろした瞼を開けた私の顔は、きっとマヌケだっただろう。
唇が離れると同時に、私を覆っていた重みも消えていく。
「美人は寝る時間だ」
「……え」
「ゴールデンタイムには寝ないと、肌に良くないんだろ?」
「……は?」
「明日さらに美人になる為に、芙美は寝る時間だ」
そう言って、寝る体勢になる男に私は固まったままでいる。