白馬の悪魔さま 【完】番外編追加

どうせ落ちるなら、

「それなら、これも不注意ですか?」

一度だけ、愛されてみたい。
自分から重ねた唇に、こうなることを知っていたように熱い舌が割って入ってくる。
ベッドに沈むまでの数秒が、重力に逆らうような長い時間に思えた。
その指が、私の髪に差し込まれる。
覆いかぶさる重みに、私は腕を回した。

このまま、全部終わればいい。
明日には消える愛だとしても、この男に落ちたい。
溺れて、消えて、溶けるみたいに……。


「はい、おしまい」

「……へ?」

下ろした瞼を開けた私の顔は、きっとマヌケだっただろう。
唇が離れると同時に、私を覆っていた重みも消えていく。

「美人は寝る時間だ」

「……え」

「ゴールデンタイムには寝ないと、肌に良くないんだろ?」

「……は?」

「明日さらに美人になる為に、芙美は寝る時間だ」

そう言って、寝る体勢になる男に私は固まったままでいる。
< 68 / 186 >

この作品をシェア

pagetop