白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
どう考えても恨んでいるだろう男が、ムカつくくらいの黒い笑みを私に向ける。
もちろん悪いのは私なのだけど、本当にこの男は好きじゃない。なんで里香はこんなのと付き合っているのだろう。
「野瀬君、それは来週埋め合わせするって」
「でも文句ぐらいは言いたいですよ。楽しみにしていたデートですから。里香さんは違うんですか?」
「もー、それはお家出る前に話したでしょう?」
自分の彼氏の腹黒さに気づくことなく頬を膨らます里香は、とても可愛いと思う。本当、羨ましい。
「そんな顔しないでください。ちゃんとわかってますから」
そう言って、甘い笑みを見せるこの男は、里香の彼氏であり、会社の後輩でもある野瀬京平だ。
嫌な奴だけど、悪い奴ではない。
「悪かったわね。もう帰るから安心してちょうだい」
「それなら助かります」
「え!芙美ちゃんもう帰っちゃうの?話は?まだ解決してないでしょう?」
伝票を手に立ち上がった私を、里香が驚いた顔で見る。
「里香さん、家崎さんも子供じゃないから、あとは自分でどうにかしますよ。散々話してすっきりしたでしょうし。それにただでさえ傷心の家崎さんを、これ以上僕らに付き合わせるのは酷だと思いますよ。まあ、家崎さんの前でいちゃついていいって言うなら別ですが。そうですよね、家崎さん?」