白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
ああ、やっぱり嫌な男だ。
でも私なんかよりもちゃんと、恋愛している男だ。
「あんたがいつか里香にフラれたら、珈琲くらい奢ってあげるわ」
「だったら今日の分は俺が出しますよ。まだフラれてないんで」
「もう。二人とも勝手なことばかり言わないでよね。私は野瀬君をフったりしないから、今日は私の奢りです」
そう言って伝票を取り上げた里香が、いつもと変わらない太陽のような笑みを見せたから、固まっていた頬が無意識に緩んだ。
里香がこの男に惚れた理由はまだ理解しきれないけど、野瀬京平が里香にここまで惚れ込んでいる理由なら、考えなくてもわかる。
私は、どうして椿社長に惹かれたのだろう。
椿社長は、私のことをどう思っているのだろう。
あのマンションに泊まった金曜日の夜、椿王子は私の身体を抱き寄せたまま、本当に眠ってしまった。
腹が立つくらい気持ち良さそうに。
出張帰りで疲れていたのは事実だろう。
それは仕方のないことだし、そう説明されたら納得した。