白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
でも、その口から発せられたのは冷めた言葉だったから、わからなくなった。
私の身体を包む優しい体温に、何を信じればいいのかわからなくて混乱して、一睡も出来なかった。
結局、朝を迎える頃に漸くその腕を抜け出した私は、急いで朝食を作ると、逃げるみたいにマンションを後にした。
そして自分の部屋に帰ると、着替える事もなくベッドに倒れこみ、漸く眠りにつくことが出来た。
それから昼を遥かに過ぎた頃、目覚めた私は携帯を開いたけれど、椿社長からの連絡は無かった。
だから久しぶりに、一人で泣いた。
悲しいのか悔しいのか、寂しいのか、はたまた怒りなのかもわからない涙に、気づいたら里香に電話をしていた。
もう、自分がどうしたいのかもわからなくて。
里香たちと別れた後、気分転換にお気に入りのファッションブランドを見て回ることにした。
春物が入荷を始めた店内は、前回来たときよりも明るい。
馴染みの店員さんの話を聞きながら新作の服たちを見ていると、鞄の中の携帯電話が鳴り出した。
「……え」
画面に表示された番号に見覚えはある。
私は迷いながらも、通話ボタンに触れた。
「はい、家崎です」