白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
翌日、選んだのはLANVINの黒のカクテルドレス。
ルブタンのパンプスは赤いソールが美しい。

今日は有名パティシエと女性誌が合同で主催するバレンタインパーティーで、以前に取引をした企業さんも絡んでいる縁で招待された。
芸能やファッション関係が多いパーティーのせいか、参加者も華やかで派手派手しい。
ああ、既に帰りたい。
何人か知った顔も居たけれど、みんな売り込みに忙しそうで、挨拶を交わすとすぐに消えていく。
だから会場に用意された色とりどりのチョコレートを、一人で摘み味わう。

「うん。美味しい」

せっかく来たのだから、この甘さを堪能して帰ろう。
社長の同伴でもなく、会社からの派遣でもないパーティーへの参加はいつもより気が楽だ。だから片手にワインの入ったグラスを持ち、私は次々にチョコレートを口に運ぶ。
今日は出会いもなさそうだ。
そう思うとなんだかホッとして、自分でも気づかぬうちに酔いが回っていく。最高に気持ちが良い。

一瞬、入り口の方が騒がしくなった気がするけれど、目の前に並ぶチョコレートに夢中な私は、振り返ることもしなかった。

あっちも美味しそう。ケーキもあるんだ。
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