白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
こんなのまた、好きになる。
椿王子でいっぱいになる。
一秒も待たずに重なった唇。
深いキスの後、一度啄ばむようなキスをして、また深く深く求め合う。もう何度目かのキス。唇は、男の癖を憶えたように動く。
同じ人と、こんなにもキスするのはいつぶりだろう。
最近は彼氏と呼べる前に終わる関係ばかりだったから、こんな風に相手の癖を憶える間も無かった。
なんてことを、彼氏以前の男の腕の中で思う私は、やっぱり馬鹿な女だ。
「考え事?」
「え?」
「それとも、俺とのキスは退屈?」
睫毛が触れそうな距離で、椿王子が私を見つめる。
その言葉に、恥ずかしくなった。
まさか他の男とのキスと、比べていたなんて言えない。
ましてや、そのどれと比べても、今が一番気持ち良いなんてことは……言えないと思っていた。
「椿社長のキス、好きです」
なのに気づけば言葉にしていた。
「可愛い」
そう言ってまた、椿社長は啄ばむようなキスをした後で、噛み付くように深い誘いに私を落とす。