白馬の悪魔さま 【完】番外編追加

「そんな顔はするな」

「そんな顔って、私は別に何も」

数秒前の自分の言葉を無かったことにしたい。
だって、傷ついた顔をした。
好きって顔をした。

「俺が知りたかったのは、お前に寄りつく虫けら共のこと」

グラス片手に私の前まで来た椿王子が、その口元に嫌味な笑みを浮かべる。

「虫けらって、どういう意味ですか?」

「芙美の前には、目を離した次の瞬間には違う男が現れる」

距離が近づいて、まだ飲んでもいないのに酔いそうになる。

「永遠の椅子取りゲームってところか」

「どういう、んっ」

「甘いな」

一瞬触れて離れていくキス。

「あの、待っ、んんっ」

「芙美の唇は甘いから、虫が寄りつくんだ」

また重なって、離れては重なる。

「じゃあ、こうしてキスする椿社長も虫ですか?」

「俺?」

合わさる視線に、頬の熱が増した。
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