白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「ちょっと、声大きいから」
「だって!芙美ちゃん今日は金曜だよ!?」
金曜日。昼休みに訪れた喫茶店に、里香の声が響く。
「ねえ、それってもう付き合っているってこと?」
「付き合ってないよ」
「でも芙美ちゃんの言っているそれって、同棲だよ?」
「違います。毎朝自宅に帰ってから出勤もしているし、ただ泊まっただけで、パジャマすら置いてないもん」
「それってすごく面倒くさい生活だね」
目を丸くして、不思議そうに私を見る里香の言葉に、私は大きな溜息を零す。
不思議に思っているのは、私も同じだ。
むしろ、誰よりも疑問に思っている。
椿社長との、この関係に。
月曜日に名刺入れを取りに行った私は、そのまま椿社長に勧められたワインを飲み、気づいたらベッドで眠っていた。
飲み過ぎたことを反省しながら帰った火曜の朝、今度は社員証がないことに気がついた。
それから今日まで、私は何かしらのアクシデントにより、あのマンションに足を運ぶことを余儀なくされている。
「ねえ、その人本当に彼女いるの?」
「え?」
「だって毎日芙美ちゃんが泊まっているんでしょう?そんなのおかしくない?」