白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
だけど、話が盛り上がっても、ワインが進んでも、あの男が消えてくれない。
いっそのこと、もっと酔って流されてしまいたくなる。
今週は会えないと言われて、彼女とのデートまで目撃して、なのに仕事が終わってから今もずっと、連絡が来るのを待っている私は、どうしようもなく馬鹿だ。
椿社長は私の事なんて思い出しもせずに、今頃彼女との時間を過ごしているかもしれないのに。
「家崎さん、」
「え、」
「大丈夫?酔ってきた?」
「あ、いえ。すみません」
「まだ飲めるなら場所変えない?」
「え?」
「夜景が綺麗なところで、もう少し飲まない?」
夜景……。
椿王子も、あの夜景を彼女と見ているのだろうか。
「……行きたいです」
このまま流されたら、忘れられるかな。
連れて行かれたのは、一流ホテルの最上階に位置するラウンジだった。
美味しいワインと美味しいチーズ。
饒舌な皆川社長に、心地良さが増していく。