ねぇ、教えてよ。



先生、貴方は私に言いました。

幸せなんて、所詮幻想だって。



「先生はどうして煙草を吸うの?」

「なんでだろ。悪い大人だから?」



ほんとは自分でも気付いてるくせに、はぐらかす。

その煙の中に、幻想を見てること。

縋り付くみたいに、名残惜しそうに、

空へと消えていく煙を見ては、また新たに吐き出して。


先生…胸が苦しいよ。



「…もう、日が暮れる時間か」

「うん…」



空がオレンジに染まるこの瞬間が嫌いだ。

窮屈な家で“いい子な自分”になる時間が近付いているから。


でもね、先生を照らすオレンジがいつもより綺麗だったから。

二人で一緒に見るオレンジは…

嫌いじゃない、って思ったの。

< 18 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop