ねぇ、教えてよ。
「…安座間(あざま)、か」
私の苗字を呼んで、フッと煙を吐く。
「ここって煙草吸っていいの?」
「まぁ、ダメだろうな」
どこか他人事のように言ってのける先生は、
私の知っている先生ではなくて。
私の中の先生のイメージは、“良い大人”の代表みたいな人だったのに。
熱血漢の体育教師みたいに暑苦しくもなく、
規則規則とうるさい生徒指導の先生とも違い、
ヘラヘラ生徒と友達ごっこする形だけの“良い教師”でもなくて。
先生は誰に対しても敬語で話し、生徒とは常に距離を取っている。
かと言って冷たいわけではなく分からないところはキチンと丁寧に教えてくれる、そんな先生。
あれ、そういえば。
『質問等は放課後に受け付けますので』
あんなこと言ってたくせに、こんなとこにいたら誰も質問なんてできないじゃん。