秋の焼き芋争奪戦

「それで、下の方に名前を書くんだ。もちろん、一人、一箇所だ。……またお前か。レナ・ラグナールと言うのは、どこの誰だ。」

「私のペンネームです。」

「真面目にやれ。」

　こうして、全員が本名を書き込み、四本の縦線の間に、横線を引くことになったが、こう言う時に、各人の個性が現われる。

「おいおい、縦線をまたぐように横線を引いてもいいのかよ。それに、途切れている横線はあるし、ここに書いてあるワープって何だ、どこに飛ばす気だ。」

「いいじゃないですか。アミダくじって、どこに辿り着くかを先読みする人がいるから、こう言う要素を取り入れないと、マンネリになってしまうんですよ。」

「何がマンネリだ。これは一回しかやらないだろ。」

　言い争う先輩とウェイトレスを気に止めず、店長は黙々と線を引いている。やはり、アミダくじに曲線や斜線を書き込むことが許されなかった世代のせいなのか、それとも実は几帳面だったのかは知らないが、まるで定規を使っているかのように、正確な直線を引いている。良く見ると、図形を描こうとしているようだが、妙に角ばっているのが気にかかる。

「どうだ、見事な一筆書きだろ。」

　よく見ると、それは図形ではなく、ビルの絵であった。店長は、一筆書きでビルを描いていたのだ。線と線の幅は非常に細く、まるで機械で描いたかのような緻密なビルの絵が、そこに描かれていた。しかし、アミダくじとの相性は悪い。