秋の焼き芋争奪戦
「新幹線で新潟に向かって、午前中は市内を観光して、午後からは、ヘッドフォンの展示会を観に行きましたよ。」
「ほう、展示会か。それで、目当ての物は見つかったか。質にこだわると、値段が高くても欲しくなるからな。」
「まぁ、展示会ですから。販売予定の製品が展示されているだけで、実際に買える訳じゃありませんよ。」
「そうなのか。今度はワシも連れて行ってくれ。こう見えて、若い頃はロックを聞いていたものだ。ドラムの音が綺麗に響くタイプが欲しくてな。」
「そんなこと言って、ヘッドフォンを付けた可愛い女の子を見に行きたいだけじゃないんですか。コンパニオンって言うんでしたっけ、それが目的なんでしょ。」
ウェイトレスが口を挟むが、店長は気にすることなく話を続けた。
「そんなことは無いぞ。ところで、この土産だが、なかなか珍しいな。笹に包まれた団子なんて、この辺りじゃ見かけないからな。」
店長が言うとおり、それは笹の葉で包まれたヨモギの団子だった。先輩は手馴れた手付きで紐をほどき、笹の葉を半分ほど剥き、団子に齧りついた。
「なるほど、そうやって食べるわけか。」
見よう見まねで、その団子を食べてみると、ヨモギの団子の中には、黒い小豆餡が入っており、和菓子らしい、ほんのりとした甘さが口に広がった。
「そうだ。店長は料理人ですから、殆どの料理を見ただけで、名前を特定できますよね。色々と、写真も用意してきましたよ。」
ポケットから携帯電話を取り出した先輩は、少しおどけた顔を見せながら、店長に画面を見せた。携帯電話の画面には、旅先で取ってきた写真が表示されていた。一枚目の写真は、カツを乗せた丼の写真だった。
店長とウェイトレスは、携帯の画面を見つめているが、先輩の意図に気付かない。
「なんだ、カツ丼じゃないか。この前食べた記憶があるぞ。」
「そう言えば、私と一緒に食べましたね。」
「そうだったな。薄暗い取調室の中で、初老のベテラン刑事が、ワシの前にカツ丼を出して……って、コラ。人を犯罪者のように扱うな。だいたい、なんでお前が共犯になるんだ。従業員と一緒に犯罪に手を染める経営者がどこに居る。もっと真面目に考えろ。」
「ほう、展示会か。それで、目当ての物は見つかったか。質にこだわると、値段が高くても欲しくなるからな。」
「まぁ、展示会ですから。販売予定の製品が展示されているだけで、実際に買える訳じゃありませんよ。」
「そうなのか。今度はワシも連れて行ってくれ。こう見えて、若い頃はロックを聞いていたものだ。ドラムの音が綺麗に響くタイプが欲しくてな。」
「そんなこと言って、ヘッドフォンを付けた可愛い女の子を見に行きたいだけじゃないんですか。コンパニオンって言うんでしたっけ、それが目的なんでしょ。」
ウェイトレスが口を挟むが、店長は気にすることなく話を続けた。
「そんなことは無いぞ。ところで、この土産だが、なかなか珍しいな。笹に包まれた団子なんて、この辺りじゃ見かけないからな。」
店長が言うとおり、それは笹の葉で包まれたヨモギの団子だった。先輩は手馴れた手付きで紐をほどき、笹の葉を半分ほど剥き、団子に齧りついた。
「なるほど、そうやって食べるわけか。」
見よう見まねで、その団子を食べてみると、ヨモギの団子の中には、黒い小豆餡が入っており、和菓子らしい、ほんのりとした甘さが口に広がった。
「そうだ。店長は料理人ですから、殆どの料理を見ただけで、名前を特定できますよね。色々と、写真も用意してきましたよ。」
ポケットから携帯電話を取り出した先輩は、少しおどけた顔を見せながら、店長に画面を見せた。携帯電話の画面には、旅先で取ってきた写真が表示されていた。一枚目の写真は、カツを乗せた丼の写真だった。
店長とウェイトレスは、携帯の画面を見つめているが、先輩の意図に気付かない。
「なんだ、カツ丼じゃないか。この前食べた記憶があるぞ。」
「そう言えば、私と一緒に食べましたね。」
「そうだったな。薄暗い取調室の中で、初老のベテラン刑事が、ワシの前にカツ丼を出して……って、コラ。人を犯罪者のように扱うな。だいたい、なんでお前が共犯になるんだ。従業員と一緒に犯罪に手を染める経営者がどこに居る。もっと真面目に考えろ。」