秋の焼き芋争奪戦
 その言葉と共に、このクイズは終わってしまった。確かに見慣れない食べ物であったが、あれは一体、なんだったのか。おそらく、現地に行かないと分からない料理なのだろう。コックとして修行中の僕にとって、印象に残る食べ物であった。

「考えるだけで答えが分かれば、苦労しないと思うがな。」

「なーしてだっや。はよおしえれっや。」

 諦めてしまった店長とは異なり、ウェイトレスは聞きかじった新潟弁で文句を言った。

 これを標準語に直すと、「何で、そんなことを言うんだ。いいから、早く答えを教えろ。」と言う意味になり、苛立った時に使われることがあるが、年頃の女性が口にすべき言葉ではない。

「新潟弁で文句を言えるのに、なんでこれが分からないんだよ。」

 呆れた顔をする先輩を睨み付け、彼女は、さらに文句を言う。

「うるさいなあ。そんなこと言うと、残っているお団子、私が食べますよ。」

 ふとテーブルを見ると、先輩が土産に持ってきた団子は、一つしか残っていない。側に置いてある箱には、五個入りと書いてあるので、一人が一つずつ食べていて、最後の一つが余っていることになる。

「むむ、残り一つか。」

 新潟土産として有名な団子らしいのだが、この辺りでは売っていない。そう聞くと、もう一つ食べたくなってしまう。こうして、残り一つの団子を巡り、四人の睨み合いが始まった。
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