消える僕の前に、君が現れたら。
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穏やかな陽の光。

けどどこかそれは重い雰囲気をまとって、僕は瞼を開いた。

「おはよ」

視界には、僕が起きるのを待っていたようにヒロくんがベッドの横に座っていた。

「…おはよう」

「あのさ、外出。許す」

「…」

ヒロくんの事だからダメ、とか。

言いそうだったのに。

喜びの前に驚きだった。

「やっぱさー。やりたいことはやりたい内にやっとくのが1番だと思って」

「…え、あ、ありがとう」

「おい、もっと喜べよぉ。まーお前はそういうやつって分かってっけど」

ヒロくんは口こそ悪いけど気さくな上、何よりお人好しだ。

それこそ医者に向いてないってくらい。

「…ただ」

「うん」

「薬は絶対のみ忘れないこと、帰る時間とかはやぶんなよ。明日のことも考えて5時までな。それから…」

「ヒロくん」

僕はヒロくんの言葉をわざとさえぎった。

こうなると絶対止まらないことが分かってるから。

「メモとかにまとめてくれる?10時くらいに出るから」

「…あ?あぁ、おう。分かった。じゃあとりあえず朝メシは残さず食っとけ!」

「あと」

「ん?何、これ以上なんかあんのかよ」

「ヒゲそった方がいいよ」

じゃあな、と言って僕の病室から出て行った。

あれでも30前後のおっさん。

ヒゲなんで簡単に生えるけど医者はない方がいいとかなんとか。

知らないけどね。

ヒロくんが出ていったあと、いつも入院の時は看護師さんが運んできてくれるんだけど、今日は自分で歩いて食堂まで行った。

前、長期入院してた時、足怪我してたから歩けなくて治っても歩くの慣れなかったから。

それに、なるべく迷惑かけるのは最小限にしないと。

僕は食堂で朝食を済ませてから1度病室に戻った。

病室に戻ると、テレビ台の机の上に僕がヒロくんに注文してたと思われるメモが置いてあった。

そして支度をして。

スマホに予定とアラームを書き込んでから病院を出た。


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