消える僕の前に、君が現れたら。
「…」

…なんだ。怖い。

彼女は視線を僕から離さない。

負けじとびくびくしながらも目は見つめ返した。

…というか目が逸らせなかった。

何で見るの…。

…あ。

「あの、もしかして、誰か隣いたりとか…。どきます、全然」

すると彼女ははっとして。

「え、いや、全然。私1人です」

「でも隣男って言うのもあれですよね…すいません」

彼女は首を振った。

「いえ、こんなこと大学通ってたら当たり前ですよ。って言ってもまだ1年生なんですけど」

あ、同学年。

「…一緒だ」

思わず声に出てしまった。下を向く。

僕が顔を逸らしても彼女は会話を続けた。

「そうなんですか。ここ、割と先輩達が多くて。1年生は初めて見たんです」

嬉しそうなトーンだった。

確かに、言われてみるとそうだったかも。

彼女は続けた。

「同学年がいて良かったです。まあ、同い年とは限らないんですけどね」

僕はゆっくりと彼女の方に顔を向けた。

消え入るような声で、

「あー…18です」

と答えた。

すると彼女は嬉しそうに、

「同い年ですね」

と笑った。

僕と同じような物静かさをもっていたのに、笑うとその雰囲気が崩れる程だった。

真面目な人、と言うだけなのかもしれない。

僕は彼女の言葉を受け取ると直ぐに授業に入った。


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