今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
病院関係者やその業界の人間が集まる公の場。
そこで、婚約者をお披露目したいということだ。
「考えたんだが、婚姻届はすぐに出さなくてもいいと思っている」
「……と、いいますと?」
「 終わらせるときに籍が入っていたら、戸籍にバツがつくだろ。俺はいいとしても、女のお前は世間から傷物扱いされる」
妙に納得のできる内容で、沙帆は「なるほど……」と頷いてしまう。
一応、その辺りは気遣ってくれるようだ。
「婚約しているという状態でも、周囲には十分関係はアピールできる。そして終わらせるとなった時は、俺が原因で婚約破棄になったということにすれば、お前は世間から同情される身となる。ご両親も傷心のお前にすぐに結婚の話はできないだろうしな」
「でも、それじゃあなたの立場が悪く……」
「むしろそれが狙いだ」
口角をきゅっと上げて、怜士は横目で沙帆を見る。
「多少悪い噂でも流れてくれれば、その後、うちと縁談を持ちたいと思わなくなるだろ」