今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
適当に話を進めているように見えて、意外にも計算し尽くされていたことに沙帆は黙って感心していた。
「そこまで考えて……」
「当たり前だろ。まぁ実際、婚約解消とでもなれば、しばらくは周囲もそっとしておいてくれると思う。よっぽどの事情があったと勘繰りながらな」
「じゃあ、とりあえずはその、祝賀会に一緒に出席することができればという感じですね」
「そういうことになるな」
期限としてはきっと一年もない。
その間、婚約者として振る舞えばいいということだ。
きっとそのミッションだって、そう多くはないはず。
「そういうことだから、早急に出てくる準備をすること。あと、うちの方にも簡単に報告に行く予定を入れておく」
やっぱり淡々と話をする怜士の声を耳にしながら、沙帆の募らせていた不安は少しずつ沈静化していく。
(演技力には自信はないけど、きっとなんとかなるよね……?)
この先一生、偽っていくわけではない。
そこまで深刻に悩むこともないかもしれないと、気持ちを入れ替え前向きに考え始めた。