今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
足早に広いカウンター式キッチンに入っていき、片っ端から収納を開けていく。
あとから付いてきた怜士はその様子を眺めながら「どうした?」と声をかけた。
「あの、食器とか、調理器具とかは……?」
さっきキッチンをチラッと覗いた時、ここだけ他と違い用意が滞っているように見えた。
調理家電などは入っているのに、食器や料理をするための道具がない。
「食器か……料理なんかするのか?」
「しますよ。だって、食事はどうするんですか?」
沙帆の質問に、カウンター越しに中を覗く怜士は当たり前のように「適当に外食で」と答える。
きっと、今までもそうしてきたのだろう。
「そうですか……」
「必要なら、見に行くか?」
「え……?」
カウンターの向こうから広いキッチンに入ってきた怜士は、沙帆がやっていたように引き出しや収納スペースを開けて「確かに何もないな」と呟く。
「いいんですか?」
「ああ。何が必要か俺にはわからないから、沙帆が見て必要なものを買ってきたらいい」