今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
食器類の話から、そのあとすぐに買い物に出かけることになった。
どこに向かえばいいのかと聞かれて、特にこだわりのなかった沙帆は「近場で、お店の多いところなら」と答えた。
怜士が向かった先は、数年前にできた銀座の複合商業施設の地下駐車場だった。
日曜日の昼下がり。
駐車場からショッピングフロアへと上がると、多くの買い物客で賑わいをみせている。
「この中でいいのか? 近くに他のデパートもあるけど」
「はい、ここが見たいです」
エスカレーター付近でフロアガイドを見つけた沙帆は、その前に立ち止まり何階に行こうか眺め始める。
横に並んできた怜士が不意に手を繋いできて、沙帆は驚いて顔を上げた。
しかし、顔を見上げても怜士は「ん?」と何事もなかったかの反応で、沙帆を見下ろす。
「え、あの、手が……」
「なんだよ。〝夫婦〟になるんだから、何がおかしいんだ」
意味深に〝夫婦〟の部分を強調して言い、沙帆の耳元に唇を寄せる。
「外でくらい婚約者を演じる練習をしとかないと、いざという時にボロが出たら困るからな」
「っ!」
内緒話をするように告げられた言葉に、沙帆の心臓がぴょんと跳ねた。