今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
跳ねた心臓が落ち着いていかない。
目的の階に降り立つとまたすぐに怜士に手を取られてしまい、休む暇なく鼓動が速まる。
ちらりと怜士の様子を窺うと、特に変わらぬ様子で並ぶ店舗を目に留めていた。
「あ、あそこです。見てもいいですか?」
行きたかった店舗が近付いて声をかけると、怜士は「一緒に見る」と言いながらも、店前でやっと沙帆の手を離す。
高まった緊張をリセットさせるために、沙帆は真剣に並ぶ食器類に視線を注いでいった。
見たいと思った店は、食器から調理器具までが揃うキッチン用品店。
シンプルでモダンな食器類は、眺めているだけで楽しい気分にさせてくれる。
小皿や小鉢、ワンプレート料理に使える大皿や、パスタ皿――。
一種類につき、とりあえず二つずつを手にしていると、近くにいた店員さんが「よろしければどうぞ」と、カゴを持ってきてくれる。
沙帆の代わりに怜士が「どうも」と受け取り、沙帆の手にした商品を次々とカゴに入れていった。
そこで沙帆は「あっ」とあることに気付く。