今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
ついでにとなりにいる沙帆にもその視線が下りてくるのだが、その大半が間違いなく〝え、何故?〟という感情がこもっているのだ。
明らかに釣り合っていないのは沙帆自身重々承知の上だが、こうも立て続けにだと身の置き所に困ってしまう。
(本当は手を繋いで歩くような関係じゃないのに、他人から見たら不釣り合いなカップルに見えちゃってるわけだものね……)
そろりと視線を上げて、沙帆は横から怜士の顔を盗み見る。
きっちりとセットされた黒髪に、ノーメイクのくせに綺麗な肌質。
切れ長の瞳とすっと高い鼻梁。
どの角度から見ても端整で抜かりなく、うっとりとさせられる。
「なに見てんだ?」
こっそり見るつもりがつい見つめてしまい、急に視線を合わせてきた怜士に沙帆はびくりと肩を揺らす。
「い、いえ」と目を逸らしたものの、あからさまに動揺が表れていた。
「出てきたついでに何か食べて帰るか」
「あ、はい……」
「この近くによく使う店があるんだ」
銀座の一等地の地下にある店に向かうと、本当によく知るらしく、怜士を見るなり黒服のスタッフは「いつもありがとうございます」と挨拶をした。