今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
あの、お見合いの日――。
自分の感情が最優先になって、決め付けるような、押し付けるような言い方をしてしまった。
『この間から気に食わなかったが……医者を一色単にダメ人間みたいに言うのは、迷惑な話だ』
そう言われて、沙帆は確かにその通りだと思った。
「なんだ、今日はずいぶんとしおらしいな」
「しおらしいって……そんなことは。ただ、確かに偏見だったなって、思ったので」
目の前に置かれた黒く四角い平らな皿に、シェフがセンス良く炙った野菜をのせていく。
皿の手前に置かれた箸を手にした怜士に倣って、沙帆も「いただきます」と黒い箸を手に取った。
「ご両親とは、仲が悪そうには見えなかったが……そんな言い方をするほど」
「……単純に、寂しかったんだと思います」