今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
言いながら、またじわじわと顔に熱が集まってくるのを感じ始める。
おずおずと目線を上げていった先、怜士が満足気に片方だけ口角を上げて沙帆を見つめていた。
「そう、普段からそう呼んでおかないとな。もう一回」
「え……怜士さ――」
呼べと要求しておきながら、沙帆の声を奪ったのは誰でもない怜士の唇だった。
腰に回っていた怜士の腕が、沙帆の身体を更に引き寄せる。
強張って硬く閉ざした沙帆の唇を怜士は食み、とろけるような甘い刺激を送り込む。
いつのまにか誘われるように唇を開いてしまい、悪戯な怜士の舌が沙帆の逃げる舌を絡め取った。
「ンっ、ふっ……」
今まで体験したことのない濃厚で巧みな口付けに、沙帆は目眩を感じるほどクラクラしてしまう。
(どうして、こんなこと――⁉︎)
気付かないうちに腰から力が抜けて崩れ落ちかけた沙帆を、怜士はしっかりと力強く抱き留めた。
唇が離されても、心配になるほど動悸がしている。
内側から叩くように激しく心臓が鳴って、沙帆は涙の滲む目で怜士を見上げた。