今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「えー! じゃあ、絶対に招待してくださいね!」
声を弾ませる花梨に、沙帆は微笑み頷くことが精一杯だった。
『もちろんだよ』と約束できないことが、また沙帆の胸をずきりと痛める。
「今から楽しみだな〜」とニコニコ笑う花梨を横目に、沙帆は心の中で「ごめん」と謝っていた。
「っ⁉︎」
そんな話をしていた時、突然背後から頭上をコツッと小突かれた。
「あっ……」
振り返った目の前に糊の利いた白衣が見えて、弾かれたように顔を上げる。
横で花梨が「あぁっ」と驚いた声を出した。
いつのまにか背後に現れていたのは、淡いブルーのシャツにストライプのタイを締め、ロングの白衣を羽織った怜士だった。
際どい話題を繰り広げていただけあって、いつから近くにいたのかヒヤッとする。
それとは別で、近くで顔を合わせたことに鼓動が高鳴っていく。
「仕事中だと思うが、ちょっといいか?」
「あ……」
いいものだろうかと沙帆が花梨に視線を送ると、花梨は「大丈夫です!」と沙帆が抜けることを了承してくれる。
沙帆は「ごめんね」と断り、その場を怜士と離れていった。