今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「頼みたいこと、ですか?」
「ああ。沙帆に個人的に清掃を依頼したい。うちの病院にも、業者に清掃は依頼しているが、俺の部屋だけ入らないようにさせている」
思わぬ申し出に、沙帆は目を丸くした。
「え……それは、ご実家の病院、ということですよね?」
開院百周年が間近に迫る『鷹取総合病院』は、百床以上のベッドを持つそれなりに大きい病院だと沙帆は両親に聞かされている。
次期院長となる怜士の自室、ということのようだ。
「それは、構いませんが……私なんかでお役に立ちますか?」
「お役に立つも何も、プロに頼むのに俺は何も心配してないが」
フッと口元を綻ばせて、怜士は沙帆の頭に大きな手を載せる。
ふわふわと撫でると、わずかに目尻を下げて沙帆を見つめた。
「月、木、金曜は、基本的に鷹取の病院の方に行ってる。初めは俺がいる日に来てもらいたい」
「わかりました。それなら、明日の木曜日はどうですか? ちょうど仕事がお昼までなので、午後からになってしまうのですが……」
「明日か……ああ、午後なら大丈夫だ。特になんの予定も入っていない」
「そうですか。では、明日の午後に伺いますね」