今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~


気持ちを沈め、真剣に手元のモップを動かし始めた時だった。

後方近くから声をかけられて手を止める。

(私……? でも、今おばさんって……)

さすがにまだおばさんと言われる歳ではないと思いながら振り返った沙帆だったが、そこに立っていたのは明らかに自分より若い女の子だった。

高校生……じゃなかったとしても、十代後半は間違いないだろう。

色素の薄いふわふわのセミロングヘアで、長そうな前髪を斜めにしてピンで留めている。

色白で、黒目がちな印象的な瞳の持ち主だ。

でも、この病院に入院しているらしく、服装は前ボタンのピンク色の寝間着を身に付けている。

おばさんなんて呼ぶとは失礼な!と思った沙帆だったが、彼女から見れば十分二十代半ばの自分はおばさんなんだろうと諦めがついた。


「私……ですか?」


周囲に他に呼び止めるような人の姿はない。

何より、彼女の目が真っ直ぐ沙帆の顔を捕えていて、聞くまでもない質問だった。


「怜士先生と、どういう関係なの?」

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